清酒の製造プロセスにユーグレナ粉末を添加して、グリーン日本酒を製造!日本農芸化学会の2024年度大会(東京大会)の「農芸化学を体感する」にて報告

農芸化学会での展示

津南醸造株式会社(本社:新潟県津南町、代表取締役:鈴木健吾、以下津南醸造)は、株式会社ユーグレナと株式会社FERMENT8の協力のもと、清酒の製造プロセスにユーグレナ粉末を用いた日本酒を開発しました。新しくユーグレナ粉末をプロセスに導入してできあがった清酒を「グリーン日本酒」と命名し、日本農芸化学会の2024年度大会(東京大会) における100周年記念企画「農芸化学を体感する」にて、「グリーン日本酒」の製法の報告とともにサンプルを展示しました。

研究の背景

 国や企業による複数のプロジェクトで、微細藻類による二酸化炭素の固定と資源化によるエネルギーおよび食料資源の持続的生産システムの創出に関する研究が実施されています。その中の一つに、発酵によって高付加価値の素材を検討する研究があります。

 津南醸造では「酒造とサイエンスの融合」を目指し、発酵の研究開発を進めています。今回「グリーン発酵」と呼ばれる藻類を用いて行う発酵により、発酵の進行パターンを変化させることを目的に、微細藻類のユーグレナ粉末を添加して日本酒製造を実施しました。

ユーグレナ粉末を用いた日本酒の製造

 発酵の事例の応用として、日本酒の製造プロセスのうち、酵母を活性化させるプロセスにおいて、ユーグレナ粉末を用いました。10L超の醸造設備で、ユーグレナ粉末を用いるパターン(グリーン日本酒)と用いないパターン(コントロール)とで生産を行いました。 

製造した日本酒の濾過工程

 

「グリーン日本酒」に対する評価

 ①成分分析の結果

 今回の製造で得られた日本酒について、どのような違いがあるか化学分析機器を用いて、コントロールと「グリーン日本酒」の成分の比較・分析を行いました(表1、表2、表3)。

 これらの分析結果において、日本酒製造プロセスにユーグレナ粉末を添加することによって、酢酸イソアミル量/イソアミルアルコール量の比率が向上することから、エステル化効率が向上することが推定されました。また、カプロン酸エチルの含有量が高くなったことを確認しました。

②AIによる日本酒の官能評価結果

  また、今回の製造で得られた日本酒について、コントロールと「グリーン日本酒」で具体的にどのような違いがあるか、株式会社野村事務所によるAI型食品分析機器「ProfilePrint」を活用して官能評価を行いました。

株式会社野村事務所においてAI型食品分析機器「ProfilePrint」を活用して官能評価を行いました
 今回の日本酒の評価に用いた分析機器「ProfilePrint」
津南醸造で従来作られている6種の日本酒との比較を含めてプロットした結果。(黄色がコントロールで、緑色が「グリーン日本酒」
津南醸造で従来作られている6種の日本酒との比較を含めてプロットした結果。(黄色がコントロールで、緑色が「グリーン日本酒」。丸の大きさは甘さのパラメータの数字の大きさを示す。)

  今回の分析結果によると、ユーグレナ粉末の添加によって、香りや甘みとされる「華やかさ」が抑えられ、米の旨味や風味である「ふくよかさ」が増し、いわゆる「スッキリとした」日本酒になることを示す結果が得られました。

日本農芸化学会の2024年度大会(東京大会) における100周年記念企画の「農芸化学を体感する」にて報告 

 日本農芸化学会の2024年度大会(東京大会) における100周年記念企画の一つ「農芸化学を体感する」(3月26日)にて、この「グリーン日本酒」の研究結果報告を行いました。

日本農芸化学会の2024年度大会(東京大会) における100周年記念企画の一つ「農芸化学を体感する」(3月26日)にて、この「グリーン日本酒」の研究結果報告を行いました。
「グリーン日本酒」に関する展示の様子

 今後の展開について

 今回できた「グリーン日本酒」は、2024年3月27日(水)~29日(金)に開催される「SHINAGAWA TECH SHOWCASE」で展示予定です。

 今後は、酵母の発酵パターンに変化を与える方向性を活用した新しい酒造りなど、発酵を実施する現場として、AIの技術も活用しながら社会における新しい発酵の形の社会実装を目指していきます。

津南醸造株式会社について

津南醸造株式会社は、新潟県中魚沼郡津南町秋成に本社を置く日本酒蔵です。この地域は豪雪地帯で知られ、標高2,000mの山々からの天然の湧水を仕込み水に使用しています。地元特産の酒米「五百万石」を用いて、自然と共生する酒造りを行っており、「Brew for Future〜共生する未来を醸造する〜」をブランドコンセプトにしています。2023年からの新体制で、酒蔵とサイエンスの融合をベースに新たな価値創造ならびに海外展開を目指しています。