津南醸造、第31回新潟県酒造技術研究発表会で「洗米・浸漬工程のDX化」を発表

津南醸造株式会は、新潟県酒造技術研究協議会が主催する「第31回新潟県酒造技術研究発表会」において、演題「洗米・浸漬工程のDX化」を発表しました。発表では、生成AI「Claude」を活用して当蔵が内製した浸漬時間推定アプリを実機で示し、これまで蔵人の勘と紙の記録に委ねられてきた洗米・浸漬工程の判断を、蔵に蓄積された実績データから導く取り組みを報告しました。会場では酒造りの現場で使えるアプリとして好評を得たほか、同じく生成AIを活用する他蔵の蔵人との意見交換や、他業種の参加者からの相談にもつながりました。津南醸造は「伝統工芸からDeep Techへ」を掲げ、豪雪のテロワールと生成AIを組み合わせたスマート醸造を進めています。


発表内容:浸漬時間を「勘」から「自蔵のデータ」へ

日本酒造りの洗米・浸漬工程では、白米に吸わせる水の量(吸水率)を狙った値に収めるため、秒単位で浸漬時間を管理する「限定吸水」が行われます。適正な時間は、米の品種や精米歩合、その日の白米水分や水温によって変わるため、判断は長く経験に依存してきました。

今回発表したアプリは、この判断を当蔵の実績データに基づいて支援するものです。生成AI「Claude」を用いて内製し、次の2つの機能を備えています。

1. 浸漬時間の推定

品種(五百万石・こしいぶき・コシヒカリ)と精米歩合(40〜70%)を選び、白米水分・水温・目標吸水率を指定すると、推奨浸漬時間を秒単位で表示します。あわせて、参照した過去実績の件数、類似条件での実績値、ばらつきの目安も同時に示し、数字の根拠が現場で確認できる設計としました。

2. 実績データの蓄積・閲覧

麹米・掛米それぞれについて、仕込み日・年度・品種・産地・精米歩合・白米水分・水温・浸漬時間・吸水率を記録し、年度や種別、品種、産地で絞り込んで参照できます。発表時点で100件を超える自蔵の実績が蓄積されており、新たな仕込みの記録がそのまま次回の推定精度に反映されます。

蔵に眠っていた過去の記録を、次の一仕込みで使える形に変えることが、このアプリの目的です。


会場の反応

発表後、参加者からは酒造りの現場でそのまま活用できるアプリとして評価をいただきました。同じく生成AIを蔵の業務に取り入れている他蔵の蔵人とは、活用範囲や運用上の工夫について具体的な意見交換を行いました。また、酒造業以外の参加者からも「品質改善のために同様のアプリを役立てたい」との相談を受け、工程データの活用という課題が業種を越えて共通していることが確認できました。


背景:「生成AIを蔵人のひとりに」

津南醸造は、世界有数の豪雪地帯である新潟県津南町に蔵を構え、蔵全体が雪に包まれることで生まれる低温環境を「自然のシステム」として活かした酒造りを行っています。近年は「伝統工芸からDeep Techへ」を掲げ、豪雪のテロワールと発酵微生物、そして生成AIを組み合わせたスマート醸造に取り組んできました。

今回のアプリは、外部のシステムを導入したものではなく、蔵の現場が自ら課題を定義し、生成AIを道具として自ら形にした点に特徴があります。津南醸造は生成AIを「蔵人のひとり」として迎え、現場の判断を置き換えるのではなく、判断の根拠を蔵の内側に積み上げていく手段として位置づけています。


今後の展開

津南醸造は、今後も実績データの蓄積とアプリの改良を継続し、洗米・浸漬以外の工程へも同様の考え方を広げていきます。また、他蔵との情報交換を通じて、生成AIの現場活用に関する知見を業界と共有していきます。